理不尽な仕事の話
「理不尽」の意味を調べてみたら。
「理にかなわない仕方で行うこと、その態度・様子」
という内容で、「因果が矛盾していて理解できないことを意味する」とか、深すぎてよくわらかない内容だったため、小学生にもわかる事例を読んだら、
「同じテストで100点満点を取ったのに、他のやつらは褒められて、自分だけ叱られるといった状況である」
という悲しくなるわかりやすさで泣きました。あるある。
参考:「理不尽(りふじん)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
そういったネタ系の理不尽なお話って、SNSでよくバズってますよね。
お涙頂戴の感動系から、ブラック企業を目の敵にしてやろう系まで、結果的に理不尽な状況下に置かれている悲劇なヒロイン可哀想、俺もこんなことあったわというクソリプ付きが拍車をかけて楽しい読み物と化しています。
しかし、一般的には理不尽と思える場面も、当事者が「いや理不尽じゃねーよ」と思っていたり、感じていたりすれば、それは限りなく白なわけで、問題ではありません。ちなみに理不尽の対義語は、「適正」らしいです。
今回お送りするのは、僕の理不尽耐性における感覚値がぶっ壊れた時に、職場に起きる不協和音と殺伐とした人間関係のお話となります。「ぱくたそ」がブラックなのがよく分かる理由のひとつと言われたので記事にしました。
僕にも10代の頃があった時まで遡ります。
原動付き自転車の免許を取り、アルバイトで貯めたお金で高燃費のスーパーカブというバイクを購入しました。せっかくアルバイト代を使って購入したのだから、それを回収できるだけバイクを使った仕事をしようとアルバイトを探していた頃です。
ちなみに、この3年後に大腿骨の複雑骨折をするバイク事故をキメて5年間松葉杖生活になるんですが、それはまた別の機会で話すとして、その時に見つけたのが、某運送業大手のポスティングのアルバイトでした。
「配達1件○○円! あなたの頑張りで時給2000円から3000円以上!」
という完全歩合の配達のお仕事です。
いかにもブラック漂う謳い文句でジワジワくるわけですが、当時の僕は、
「頑張ればピザの配達より割がいい、バイク持ち込みできるしいいやん。」
という安直な脳で応募します。
面接へ行くと、
「バイク持ってるんだ。明日から来れる?」
というまさかの即日採用。いかにも人手不足が否めない雰囲気で「行けるっす」の一発快諾で研修がスタート。
このポスティング業務とは、担当地域を3ブロックくらいに分けて、配達員が効率よく手紙やらチラシを配達するお仕事です。
僕の地域は、
人通りが多い「駅前・繁華街中心エリア」、
ビルやマンションが多い「集合住宅エリア」、
坂道が多い「一軒家・高級住宅エリア」
の3つに別れています。
僕が配属されたエリアは、一軒家・高級住宅エリアでして、その理由が
「坂道が多いのでバイクを持っているから」
まぁ、そうだよね。
と思いつつ、研修担当の運送業のおっさんとエリアを回るわけですが、高低差のある坂道ばかり、細い階段も多くて道を覚えるのもしんどくて、
「ここバイク通れないですけど、どうしたらいいんですか?」
「足ついてねーのかよ。」
「2本あります!」
という体育会系なノリで、現地では近場までバイク、あとは歩いたほうが早いという謎ルールでの配達。これも一件投函するごとに「チャリーン」という音が聞こえる歩合制だから続けられたと思います。とはいえ、
「今日の時給は500円にも満たない・・・ これ相当頑張らないと厳しいなぁ、、」
という感じで、最初の頃はコンビニでバイトしたほうがよほどいい状態でした。
悔しいので、どのようにルートを最適化させてスピードランできるのか、リアルRTAを楽しむようになります。手書きの地図を書いて集荷した時点でエリアをパターン化させて投函します。
これが意外と面白くて、2ヶ月くらいには1時間に投函できる数が倍の1000円くらいまで上がった頃、、
僕がシフトに入っていない日、たまたま何かイベントごとのチラシが多く、配達量がいつもの3倍くらいあった日です。
その日の配達担当の主婦が夕方になっても配達が終わらず、子供を迎えにいかなくちゃいけないので、ヘルプしてほしいという要請が入り、僕がヘルプで配達しにいくことになります。
まぁ、いつもの配達コースだし、1時間もあれば配達終わるだろうと、颯爽と終えて帰ったら、僕以外にもヘルプで来ている主婦さんがオフィスにいて、よくある愚痴などを話していました。
何やら、僕はこのエリアのエース的な扱いで、僕がシフト入る日は、僕だけしかそのエリアは担当者がおらず、いつも2から3人で配達している。
その担当している人たちは、自転車で坂道を往復していて、何やら罰ゲーム的にこのエリアを嫌々担当させられている。
クソみたいな派閥があって、「集合住宅エリア」を牛耳ってるグループで美味しいところを回し、新人や取り巻き以外が坂道エリアを押し付けられているといった内容でした。
なにそれワロタ。
面倒くさい人との関わりが一切なく、がんばった分だけ歩合でなんとかなるという仕事でやる気に溢れていたので、あんまし気にならなかったんですが、その坂道エリアを自転車で担当させられている主婦さんから、
「若いのにごめんね。いつもありがとうね。」
とか
「本当は集合住宅だったらもっと稼げるんだけどね。」
とか言われるわけです。
とはいうものの、頑張れば時給1200円とかにもなるし、好きな時間に働いて終わらせて帰ればいいし、運動にもなるしスピードランで楽しんでさえいたので、とくに文句も言わずに配達を続けていた日です。
「ごめん、今日エリア2ついける?」
っと、いきなりの連絡が部署のトップから入ります。
「えっ、僕回ったことないですけど大丈夫ですかね」
「よゆーよゆー」
「じゃ、やります」
エリア担当の主婦層が子供の運動会で抜けまくるという事態でした。結局全エリアを僕と部署の正社員で配達するという無双をするわけですが、その時の時給が4000円以上という輝ける成績となります。
「集合住宅エリア」は、マンションへのポスティングなので50戸あれば、50あるポストに投函すればいいのでほぼ移動ゼロ、坂道を50軒回るのと単価は同じです。しかも平地。それが何軒もあるんですわ。超絶楽で笑いました。
普段は派閥のおばさん達がこれをマンションごとに担当して30分くらいで配って3000円とか時給でもらって帰るといったことをしていて、正社員もちゃんと配ってくれるから文句が言えない状態で困っていたと話していました。
天下りみたいな仕組みです。
-- それから三ヶ月後ぐらい
坂道エリアの担当が辞めまくり、僕の曜日以外を担当する人が出てこず正社員の方と僕で回す日々が続きます。そんな状況を看過して、重大な発表をしてくれます。
「本日から、すしぱく君にも住宅エリアを担当してもらいます。」
といういきなりの業務通告です。俺大勝利コロンビアです。
とはいえ、喜ぶのは僕だけ。
派閥のリーダー格は大反対する始末です。
「誰が坂道エリアを担当するんですか?」
「すしぱく君には、坂道エリア+住宅エリアもやってもらいます。」
「えっ」
なんと、僕が2つのエリア担当になります。
僕はとくに何も発言していないのですが、気にさわったのか、自分たちの仕事を奪われた怒りなのか、住宅エリアの派閥組が一気にシフトをいれなくなるというストライキのような行動をするのです。
そうなると、
「今日、全エリアできます?」
の連日のお願いがくるわけです。
「大丈夫っすよ」
朝から夕方過ぎまで、1000以上を投函するといったワンオペをこなします。時給だけで5000円は超えていたと思います。
独自で作成した配達地図を正社員の運送チームに共有したところ、運送の方も手伝ってほしいと言われ、ポスティングが少ない土日は引っ越しや通常の運送も手伝っていました。
しかし、ポスティングの僕への負荷が高く、相変わらず坂道エリアを担当する人は短命ですぐ辞めてしまう現状は変わらず、数週間後くらいですかね、派閥チームから「話したい」と個別に呼び出しをくらいます。
「若いから何もわかってないと思うけど、いまどういう状況かわかっています?」
「えっ、仕事を任されただけですけど・・・」
「あなたが仕事を奪っているのわかってる?」
「住宅エリア儲かるので、あそこ最高です。」
「私達、主婦はね、そういう限られた時間の中で、それぞれの役割を分担しているの。あなたが仕事できるのはわかったから、やめてちょうだい」
「わかりました、辞めますね」
「えっ」
「えっ」
というわけで、その日で辞職。事業所の記録更新できたし、バイクを買った分の貯金もできたし、学生のうちに違う職業をもっとしてみたいと思っていたのでいいタイミングでした。
当然、正社員の方にめちゃくちゃ怒られて止められたんですが、主婦の派閥組が頑張ってくれるとのことですのでと伝えて辞職したんですね。
-- 半年後くらい
「ポスティング事業所がなくなりました」
当時、坂道エリアを嫌々担当していたおばちゃんと話す機会があって、あれからの経緯を聞きました。
僕がやめたあと、住宅エリア組は同じようにシフトに入ったようですが、坂道エリアを担当せず正社員が回っていたそうです。あまりにも理不尽だったこともあり、住宅エリアの単価を下げ、坂道エリアの単価を上げた途端、派閥組が再度ストライキ。
正社員が全エリア配達できずクレームに発展して大問題となり、結局外部のポスティング事業者に委託するという形で、全員解雇とのことです。
僕はこの仕事で理不尽だと感じたことはなかったのですが、その人から、
「よくあのような理不尽な環境で続けられましたね」
と言われたことが今でも頭に残っていて、
「えっ、理不尽だったんですか・・・、僕は楽しかったんですけどね・・・」
と答えたときに苦笑いされたのを見て、あぁ、ズレてんだなと感じました。
理不尽である考え方とリミッターって人それぞれで、とあることでめちゃくちゃ理不尽な扱いをされて「それで怒るのやばいでしょ」と沸点の低さを指摘されたことが僕にもあります。
そういうときに感じるのは、自分の中で大切な部分を雑に扱われた時に感じる黒いモヤモヤが爆発したら、それは理不尽であるということなのかなと思っています。
というわけで、落ちが全然おもいつかないまま書いてしまいましたが、みなさんも理不尽な環境に出会ったら、それは理不尽ではないと考える人間の行動なのかそれとも自分が理不尽に思わないだけの行動だったのか考えてみると世の中生きるのが少し楽になるかもしれません。
おしまい。